北海道喜茂別町「知来別の小さな村プロジェクト」

喜茂別知来別の入り口から羊蹄山を望む

知来別という場所について

喜茂別町知来別地域は最盛期(1930年頃)で400人近く、1970年代初めでも100人前後の人々が生活していた場所です。しかしそれから50年、今では住人はたった一人になってしまいました。札幌に抜ける中山峠から少し入った場所で交通の便は悪くないのですが、山間の場所として耕作地としては大きな面積が取れなかったこと、山間で雪が深かったこと、そして何より経済の中心が大都市中心になって人が離れて行きました。1970年代、ここに傾斜地研究所という国の研究機関も置かれ、斜面地での農作物の育成方法の研究も行われ、その結果、この地のアスパラガスは戦前にも増して全国でも有名な農作物になりました。この場所には小学校もあり、少し離れたところからも子供が通い、多くの人で賑わっていた時期もありました。しかしそれから50年、今では住人はたった1人になってしまいました。古くなった建物もほとんどが解体され、その後長い時間が経ちました。結果的に自然豊かな場所になったとも言えます。
私たちはこの場所を「小さな村づくり」の第一弾として選ぶことにしました。道路に沿って知来別川という小さな川が流れ、西側には羊蹄山と尻別岳が並んで見えます。水は山の中から豊富に湧き出ている水があります。またかつて農地や水田であった場所もあり、再生しやすいという利点もあります。そしてこの道路は全長7キロで人に会うこともほとんどないのですが、先に書いたように札幌まで1時間半、空港まで1時間、喜茂別の町まで10分も走れば着けるという地の利もあります。小さな村づくりプロジェクトを計画するにあたって、既存の住宅がないところを選びながら、決して不便でない場所、さらに生活の多くが自給できる場所、そして風景が美しいこと、オフグリットの生活が実現できる場所を探してきました。ちなみにこの場所には電気も通っていますし、除雪もされます。それらのインフラを活用しながら徐々に完全なオフグリットを目指していこうと思います。このように消えて行きそうな集落でありながら、まだインフラの残っている場所は北海道にはたくさんあり、その意味では宝の山という感じもしています。そこを使いながら未来のためのオフグリッド生活の準備をしていきます

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建設予定地の上空から

全体構想

敷地候補は複数あり、現在それぞれ交渉中ですが、基本どの場所も使ってはいなく誰も住んでもいません。私たちは全長7キロの道路の約1キロを選び、その道路沿いに村を作ろうと考えています。それぞれの場所の計画は6戸+センターハウスを1ユニットとしています。一つ敷地の大きさは5千平米から1万平米が1ユニットです。南北の細長く奥行きの短い場所、少し奥行きのある場所などいくつか条件は違っていますが、敷地と敷地の周りの状況によって配置を変更し、周りの農地や水田も使えるようにと調整しています。センターハウスは15坪の平屋、これは通い村民の人たちが自由に使える家です。一方定住村民の家は**坪、一軒の家とゲストハウスの2つがセットになっています。全体の大きさは50坪です。基本はセルフビルドみんなで家づくり、村づくりをしていきます。このプロジェクトはさまざまな意味で実験です。色々と考えていますが、想定できないこともたくさんあります。全てが予定通りに行くとは限りません。私たちの活動は「喜茂別知来別小さな村づくり合同会社」として組織します。定住村民が株主となる組織です。

今回のプロジェクトについて

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まずはじめに赤で囲った部分を見てください。ここがはじめに手がける場所です。かつて知来別小学校があった跡地です。多くの子供達が集まってきた集落の中心の場所でした。そこから今回のプロジェクトを始めることに歴史的な意義も感じています。隣地の人との話し合いでその場所が使えるようになると配置は変わる可能性がありますが、今は現状の敷地だけで考えています。3つのステップと5つの要素から成り立っています。

●三つのステップ
1   定住村民の家とゲストハウスをつくる
センターハウスと会員用のゲストハウスを作る
3   定住村民の必要な施設を作る

●五つの要素
1 定住村民の家とゲストハウス

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センターハウスと定住村民専用のゲストハウス

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3  小屋

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踊る広場

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5  駐車場

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一楼.0
一楼4.0
一楼2.0

所有の仕方と住まい方について

*上記1から5の図面は現状の敷地での案で考えたものです。今後今調整中の敷地に合わせて、配置の計画を調整していきます。

定住村民の人たちは、はじめに土地の利用権とインフラ整備費用として一定の金額(現在200万円前後を想定しています)を支払います。また除雪費や共益費は住人で按分して支払うことになりますが、いかに安くできるかの知恵を絞っていきたいと思います。また定住村民の家はゲストハウスがセットになっていて、その収益が平等に分配されます。
通い村民は、このプロジェクトのサポート会員です。最大で150人を想定しています。月額3千円、年間3万6千円です。一緒にこの村を作り、好きな時に自由にこの家に無料で泊まれます。センターハウスには家具や調理道具など全て揃えてシェアします。
村民はいつでも利用料は無料で泊まれます。空きがない時は協議して調整するか、シェアして泊まります。場合によってはキャンプというのもあるでしょう。できるだけ多くの人に来てもらえるチャンスをどのように平等にしていくのかが課題です。数日いる人も、少し長くいる人も、そしてここで過ごしながら都会の仕事をする人も、またはこの村づくりの手伝いをする人もさまざまな状況が想定されます。
定住村民の人たちは、住人となる人達で一つの会社(知来別小さな村合同会社)を作ります。土地の使用権と建物の利用権をその会社から買い、その会社の株主になります。株主は金額の大小に関わらず議決権は平等にします。全ての株主は平等です。それぞれの建物は、会社の所有物であり同時に株主みんなの物です。6家族であれば、6人の株主の会社になるわけです。
土地、建物は会社のものですが、同時に株主のものであるので、ある意味それらの資産は共有財産になります。ここの建物は、はじめに計画した配置や建物のデザインはある程度守っていく必要があります。それは全体でバリューを作り景観を維持していく必要があるからです。

使用期間の権利に終わりはありません。途中で売ることもできます。
35年でこの建物の残存価値は0になると考えて組み立てています。
その間にも建物の修繕は行っていきますし、実際は、35年経っても価値の価値が0にはならないでしょう。建物は修繕しながら使えれば50年いや100年は使えます。住む人たちの思いも加わりコミュニティーの価値もそれに付加されるでしょう。権利を所有し続けることも、途中で売買することも可能ですが、35年後どうするかはその時を前に、建物やこの場所の状況を見ながら考えなければなりません。その意味で会員制コンドミニアムと表面上似てはいますが、根本的に思想が違います。さまざまな課題を住人で考え、組み立てていく必要があります。
仮の減損価値のシュミレーションをしてみました。しかしながら確約できることではないですし、そもそもこのプロジェクトが投資対象やレジャーとしてのリゾートではなく、ここで暮らすことを前提としていることを理解してください。

畑や水田の利用について

道路を挟んだ反対側の敷地は水田が続きます。隣には農地もあります。整備は少しずつみんなでしていかなければなりませんが、かつて農地だった耕作放棄地です。開墾のハードルは高くないと考えています。農を業としては考えていませんが、自分達が食べる分であれば作れます。現在土地の所有者と随時交渉を進めています。また加工などをして販売することもゆくゆく可能ですが、少しずつ学んでいく必要があります。幸い教えてくれる人が最後の住人の方が近くにいます。

これからの予定

今後の予定ですが、土地の整理を2023年の春までに終えて本格的な設計にかかります。同時に興味のある人の募集も行い、場所の案内もし、設計にも希望を入れたいと思います。2023年の5月には屋根付きの作業場(ここは将来駐車スペースになります)を建設、8月にはセンターハウスの建設に着手する予定です。2024年の秋までには住み始められるようにと考えています。詳しくは予定表をご覧ください。

スクリーンショット 2023-08-07 19.05.37

先の絵は現在の土地だけを想定していますが、隣地のオーナーとの話し合いで状況は変わっていくでしょう。まずは最低限の構想での予定を提示しています。

費用の目標

建設費用は通常の約3分の1でできる想定をしています。
目標値にどれだけ近づけるかまだわかりません。このプロジェクトの鍵は、自分たちで自分たちの住まいを作るために参加した人は、ボランティア代1日3000円、賄い付きという設定をしています。想定できないこともたくさんあります。
これらの全てが壮大な社会実験です。目指すべきは「未来への不安のない暮らし」です。

準備中プロジェクト
中山牧場/酪農の村(北海道別海)comming soon
ぷにの村/民家再生と染めの村(関東つくば) comming soon
標津漁師村/漁師の村(北海道標津) comming soon

写真撮影:Yutaka Kitamura (Rudesign / GO motion)

図面制作:SADAO CO., LTD + .8 CO., LTD